スマッシュ打つと見せかけて、ドロップとクリアをくり出すのって結構効き目あるんです!
今回ご紹介する研究は
「バドミントン競技におけるスマッシュ・クリア・ドロップの上肢動作様式の違い」です.
バドミントンでは有利に試合を展開するために,相手の動作からどんなショットをどこへ打ってくるかを早期に予測することが求められると思います.
相手の打つショットが早く分かればそれだけ相手に対して,アドバンテージが取れます.
過去に行われた研究1)では,初心者に比べてバドミントン選手の方がシャトルを予測する能力が高いことが考えられています.
しかし,これまでに行われた研究ではどのような動作様式がシャトルの行方を予測する上で重要か,
が分かっていませんでした.
この研究では,シャトルの行方を予測する際に有益となり得る動作の違いに関する情報を得るために,スマッシュ・ドロップ・クリアの動作様式の違いについて調査しました.
方法
対象者は,
日本トップレベルの大学生バドミントン選手7名でした.
動作の違いを分析するために,まず対象者には全身29ヶ所に赤外線反射マーカーを貼り付け,バドミントンコートの周囲に設置された8台のカメラで対象者を撮影しました.
測定項目は,
①手・肘・肩関節の移動速度
②肘・肩関節角度
③手関節の移動軌跡 でした.
肩関節角度は,
水平内転/外転角度,
外転/内転角度で
肘関節は
屈曲/伸展角度です.
分析範囲はテイクバックした時点からラケットがインパクトする時点まででした.
結果
主な結果としては,
スマッシュ:インパクトに近づくにつれ,肩関節水平内転角度が低下,肩関節外転角度が増加
クリア:動作様式の観点で違いを説明することが難しい
ドロップ:インパクト時の肩関節外転角度の低下により,手の位置が低くなる
肩関節水平内転角度の低下を簡単に説明すると,胸の開き具合が縮まるという風に想像してください.
スマッシュを打つときは他のストロークに比べて,より水平内転角度が低下します.
これはより速いスイングを遂行するためにより大きな力を発揮しようとして腕を体の中心に引き寄せようとするためだと考えられます.
ドロップについてはより安定したショットを配球することが求められますので,安定した肩関節運動が不可欠です.
これは肩関節運動の安定性に寄与する三角筋の活動が高まるのが,肩関節外転角度90°付近と考えられているので,安定したスイングが要求されるドロップではインパクトの位置が低くなることは理に適っています.
この研究から今すぐにでも実践で役立つポイントをピックアップすると,
①オーバーヘッドストロークを予測する際には手の位置に注意して観察すること
②オーバーヘッドストロークを打つ際には,手の位置に気を付けてスマッシュ,ドロップ,クリアを打つこと
でしょう.
②は打点をあげることにより相手にスマッシュだと思わせてドロップを打つことや,逆に打点を下げてドロップだと思わせてクリアを打つなどといった,いわゆるフェイントを効果的に使うことが有利に試合を展開する上で重要でしょう.
本日はこの辺で。
*研究紹介はより多くの選手や指導者にバドミントンやスポーツ科学の知見を知ってもらい,パフォーマンスアップに役立たせてもらいたいと考えています.そのため,わかりやすさを優先するために論文の内容を一部省略,統計的記述と専門用語の使用を犠牲にしておりますため,厳密性に欠ける点はご了承ください.
紹介者は論文を精読して翻訳・要約しておりますが,一部認識に間違いがある場合もあります.
より正確で詳細な情報を得たい読者の皆様は出典元を読んでいただくことをお勧めします.
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